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2010年3月17日水曜日

松井秀喜・「不動心」

松井が出している本、「不動心」を読んだ。かなり面白かった(笑)。あの松井でさえ見えない所での苦労・様々な工夫があるなんて…、当たり前だが、目からウロコな一冊である(笑)。新潮社のサイトで、編集長の本のオススメ記事があったので、更に詳しく知りたい人は↓を、お一つどうぞ(笑)。

「松井選手の思考法」(新潮社・編集長)

最近でこそ人気にかげりが出てきたとはいえ、日本人にとって野球というス ポーツはやはり特別のものがあります。いつの時代にもスター選手がいて、「時 代のヒーロー」として憧れの対象になり、後々まで人々の胸に刻まれる。その筆 頭が長嶋茂雄、王貞治の両選手でしょう では現役選手の中で、そうした存在は誰か。文句なしに名前が挙がるのは、イ チロー選手と松井秀喜選手ではないでしょうか。イチロー選手が「職人」的な印 象であるのに対して、松井選手はどことなく「古武士」を思わせる。プレイ・ス タイルも漂う雰囲気も対照的な二人ですが、ともに圧倒的な存在感があります 特に松井選手はメジャー4シーズン目の昨年5月に左手首骨折という大怪我を負 い、にもかかわらず秋には見事な復活を遂げました。あの骨折のシーンと復帰戦 のスタンディング・オベーションはご記憶の方も多いと思います 新潮新書の今月刊には、その松井選手が登場します。松井選手にはこれまでも 自らの野球観やメジャーでの日々を綴った著作がありますが、新書は初めて。今 回は野球そのものというより、選手生活を支える独自の思考法、第一線で活躍を 続けるための「松井流メンタル・コントロール術」がテーマです。題して、『 不 動心』 昨年の骨折は松井選手にとっても選手生命に関わるような大怪我でした。負傷 の瞬間に何を考えたか、連続試合出場への思い、野球ができなくなることへの不 安……。そして、その怪我をどう乗り越えていったのか。本書の冒頭ではまずそ のプロセスが詳細に明かされます 驚くのは、立ち直りの早さです。骨折は当然ショックなわけですが、手術を終 え、リハビリに入るや、松井選手は「手首の骨折のおかげで、シーズン中に打撃 改造するチャンスを得た」と考えるのです。骨折した事実は変えられないから それをどう活かすか。骨折する前の状態に戻そうとするのではなく、骨折をふま えて、さらに進化しよう——松井選手はそう考え、実際にややガニ股気味の新 フォームを引っさげて、復帰戦で4安打を放ちます 超プラス思考とでもいうのでしょうか、松井選手の「心の構え」は独特です 例えば、「自分でコントロールできることと、できないことを分ける」という考 え方。コントロールできることは最大限の努力をするが、できないことはくよく よ心配してもしょうがない。ある意味で合理的というか、強さと柔らかさが同居 しているのです 松井選手の座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。この言葉はお父様から教えられ たそうですが、泰然自若とした構えの裏にはこんなしなやかな東洋的智慧があっ たのです 星稜高校時代から強打者として知られ、長嶋監督の強運で引き当てられて巨人 へ入団。1993年から2002年までの10年間で本塁打王3回、打点王3回、首位打者 1回、通算本塁打数は332本。そして長年の夢であったニューヨーク・ヤンキー スへ移籍し、メジャーを代表する球団で主軸として活躍中——。こう書けば、順 風満帆で恵まれた選手生活ではないかと思われるかもしれません しかし少年時代から注目を浴び、期待とプレッシャーの中で、どんな時にも動 じずに自分の仕事をこなし続けるというのは並大抵のことではありません。その 陰でどれだけの努力があったか、どれだけの葛藤があったか。巨人時代には、膝 を故障したり、スランプに陥ったこともたびたびあったそうです。けれども松井 選手は弱音を吐かない。逆境をまた糧にして、前に進む。その心のプロセスが丁 寧に綴られています チョイ悪好きの野球ファンの中には、報道陣へも紳士的でそつのない受け答 えをする松井選手を、「優等生的で面白みがない」という人もいるかもしれませ ん。本書では試合後の記者対応の舞台裏も明かしてくれています 当然ながら、松井選手だって悔しい思いをしたり、腹が立つことはあるわけで す。でもそうした感情を言葉にして口に出すと、その言葉に自分が引きずられて しまい、余計に調子が悪くなる。だから悔しさは絶対に表に出さない——松井選 手はそう言います。努力して感情をコントロールしているのです これらはほんの序の口。現代を代表するトップ・アスリートは、技術や運動能 力だけでなはなく、その思考法も一流なのだとよくわかります もちろんこの「松井流思考法」は、普通のビジネスの現場に生きる私たちに とっても、大いに参考になるはずです。失敗との付き合い方、スランプへの対処 法、勝負強さの身に付け方……私はとても勉強になりましたし、本書を作る過程 で実際にその人柄に触れたこともあって、ますますファンになりました。松井選 手は、本書から感じられるとおりの、誠実で自分の言葉を持った方です。身体は 大きいし、まさに「大人(たいじん)の風格」があります 今年は松坂選手との対決もあり、シーズンが楽しみです。本書をお読みになれ ばテレビ観戦もまた興趣が増すでしょう。私もその時々の松井選手の内面を想像 しながら、応援したいと思います。